

「セリシン」は、シルクに含まれるタンパク質の一種。繭から紡ぎ出される絹の生糸は、太さ10~20ミクロンほどの極めて細い糸。その細い絹の生糸は、芯となりシルク特有の光沢を出す「フィブロイン」と、その芯を保護するように覆っている「セリシン」という性質の異なる2種類のタンパク質で形成されています。
「セリシン」は絹糸の芯・フィブロインを保護する被膜であると同時に、繭全体を守る重要な役割を果たしています。そもそも繭は、紫外線や乾燥、酸化などの外的ストレスから蚕の幼い生命を守るシェルターのようなもの。つまり、「セリシン」は繭の中の生命をしっかり守る“ディフェンスプロテイン(守りのタンパク質)”なのです。
近年シルクの成分に関する研究が進み、「セリシン」の優れた機能が明らかになってきました。とくに化粧品分野では、肌の天然保湿成分(NMF)との類似性から、すぐれた保湿作用で肌を理想的な状態に保つ働きがあることがわかっています。
そもそも、絹織物を精練加工する会社としてスタートした弊社が、いち早く「セリシン研究」に着手したきっかけ、それはある素朴な疑問でした。「精練(せいれん)」という作業は、絹織物を何度も熱湯や水にくぐらせて不純物を取り除く、厳しい水作業工程のこと。
ところが、この「精練」作業に従事する職人さんたちの手は、どんなに寒い冬場でも、荒れることなく、すべすべと白く美しい。その謎を解明しようと「セリシン研究」をスタートさせたのです。
長年の研究を経て、平成3年、弊社は「セリシン」を高純度に抽出・精製することに成功し、独自の特許製法技術※を確立しました。そして、平成9年には、「セリシン」を高純度に抽出・精製した「ピュアセリシン」を世に発表しました。
その「ピュアセリシン」がひとつの繭(約0.3g)から抽出される量は、わずか1割の0.03gほど。その純度の高さは“セリシン開発のパイオニア”だからこそ成し得た業なのです。
※特許3011759号「セリシン微粉体およびその製造法」
人の肌には素肌をしっとりさせる天然保湿成分(NMF)が存在しています。このNMFには、保湿に重要な役割を果たすアミノ酸「セリン」が約30%と最も多く含まれています。
「セリシン」はこの「セリン」をNMFよりもさらに多く含み、その他のアミノ酸組成が実にそっくりなのです。だから素肌にとてもなじみやすく、お肌のうるおいをしっかりと保ってくれるのです。つまり、素肌に負担をかけずにやさしく働きかけながら、肌を理想的な状態に保ちます。これほど保湿性の高い物質は、自然界でも珍しい存在なのです。
また、広島大学などとの産学共同研究により、「セリシン」には優れた保湿性だけでなく、チロシナーゼ阻害作用や、肌のターンオーバーをサポートする作用など、様々な肌への作用があることが明らかになったのです。
このように、肌にやさしく、多機能な「セリシン」は、化粧品の分野においてのみならず、すでに繊維などの素材に「セリシン」を付着させることで、やさしい肌触りや着心地の良さを実現させた数多くの商品が誕生しています。
国内大手メーカーとの共同商品開発にて、肌の弱い方や赤ちゃんでも安心して使える下着やパジャマなどの衣類をはじめ、寝具、車シート、カツラなど生活の様々な場面で活躍。その成果が認められ、平成13年には繊維学会にて技術賞を受賞しました。「セリシン」は、私たちの生活の身近なところで活かされているのです。
さらに現在も産学共同研究を積極的に進めており、食品・医療・医薬と様々な分野での応用が注目されています。食品分野では、「セリシン」摂取による健康効果を期待した、健康食品が既に商品化しています。
医療分野においては、平成17年に「セリシン」を用いた臓器の培養保存液が、膵島(膵臓の一部)の保存に適していることがマウス実験で実証され、実用化に向けて研究が進められています。
このようにひとつのタンパク質でこれほどの機能を併せ持つ成分は非常に稀といわれ、セリシンの持つ驚くべき有効性は、今ひときわ大きな脚光を浴び始めているのです。